アダルト・ビデオ的な医学用語35選 病院で使われるAV語録

病院で医師の書いているカルテを覗き込んだら、AVという用語が記載されているのを見かけたことがないでしょうか。また、医師どうしの会話で、AV、AVと連呼しているのを耳にしたことがあるかも知れませんね。

そうなんです、医者はアダルト・ビデオが大好きで、勤務中もずっとアダルト・ビデオのことを考えているのです…。という訳では必ずしもないのかも知れません。

AVブロックとかAVシャント、AVマルフォーメーションはメジャーな医学用語で、直訳ではAVグルーブとかAVバルブ、AV束、AVジャンクション、AVリングなんて言葉もあります。

今回は、このように「AV」が冠につく医学用語を35語ほど取り上げます。マニアックだとか、くだらない・バカバカしいと感じる人もいると思いますが、興味のある方は目を通してみてください。

診療科によって多様なAV

医学用語としての「AV」の用いられ方は診療科や専門分野によって多様ですが、9割以上が、arteriovenousの略か、atrioventricularの略語として用いられています。この両者については後述するとして、まずはそれ以外の比較的マイナーな用法を紹介します。

AV(肛門縁)

肛門科や消化器外科の医師が、AVという言葉を用いることがあります。この場合は、anal vergeの略で、カタカナ読みするとアナル・ヴァージです。肛門を診察している医師の口から、AVとかアナル・ヴァージという言葉を聞くと、え?、アナル・ヴァージン!?、アナル処女のアダルト・ビデオ!?、な、なっ、何の話をしているのか?と患者は動揺するかも知れませんね。

でも、心配ご無用です。この医師はアナル・プレイ好きの変態なのではなく、アナル・ヴァージは、「肛門縁」を意味する解剖学用語なのです。肛門の出口から2cmほど奥にある肛門上皮と直腸粘膜の境界部分を指します。

AV(好気性膣炎)

「おりもの」を主訴に産婦人科を受診し、内診検査の後、産婦人科医がAV、AVと口にしているのを聞いて、動揺した経験のある女性がいるかも知れません。だけど、決してその医師は患者のことをAV女優だと思ったのではありません。

産婦人科領域では、aerobic vaginitis(好気性膣炎)のことをAVと略します。膣炎は、様々な微生物(ウイルス、細菌、真菌、寄生虫)が原因で発生しますが、そのうち、好気性細菌を起炎菌とする膣炎のことは好気性膣炎と呼ばれることがあります。

ベテラン産婦人科は、アソコ(陰部)の臭いをかぐと、好気性膣炎か一般的な細菌性膣症の区別がつくようで、前者は激しい腐敗臭、後者は魚臭がするらしいです。

AV(人工膣)

産婦人科医がAVと発言していたら、アダルト・ビデオでも好気性膣炎でもなく別の意味で用いている可能性があります。ロキタンスキー症候群といって、子宮や膣が生まれつき欠損している女性の病気があります。この病気の患者さんには膣がないので、セックスを愉しむことができません。ロキタンスキー症候群の患者さんが、セックスの悦びを感じられるよう、artificial vagina(人工膣)を形成する治療も研究されています。

AV(空気感染ウィルス)

新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)は、AVかどうかが議論されてきました。ここでいうAVとはairborne virus(空気感染ウィルス)のことです。病原体を気道に吸入して感染する感染症には、空中で長時間浮遊する微小なエアロゾルを吸い込むエアロゾル感染と、ウイルスを含む飛沫を吸い込む飛沫感染とがあります。空気感染ウィルス(AV)の典型例は、天然痘ウィルス、麻疹ウィルス、水痘ウィルスです。

AV(人工換気あるいは補助換気)

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に罹ると、呼吸機能が悪化し、AVが必要になることがあります。ここでいうAVとは、artificial ventilation(人工換気)とかassisted ventilation(補助換気)の略で、広義の人工呼吸のことです。呼吸機能が低下し、自身の呼吸機能だけでは生存に必要な酸素が供給できない患者には、機械で呼吸をサポートしますが、呼吸機能の状況などにより様々なタイプの人工呼吸器が用いられます。

AV(圧変動性めまい)

もしあなたがダイビングをしたことがあるなら、AVを経験したことがあるかも知れません。耳鼻科領域では、alternobaric vertigo(圧変動性めまい)のことをAVと略します。中耳腔の圧が高まることによって生じる一過性のめまいで、通常は数分で症状は消失します。スキューバーダイバーの約3割が経験すると報告されています。

AV(字ひとつ視力)

眼科医も、AVという略語を使うことがあります。この場合は、angular vision(字ひとつ視力)のことを指しています。一般的なの視力検査では、視力表と呼ばれる上下左右のいずれかが部分的に欠損した黒い文字文字が多数並んだボードを用いて行われます。これを「字づまり視力」と呼びますが、被験者が子どもなど視力表を用いた検査が困難な場合、一文字だけ書いたカード見せて、視力を測定することがあります。これが字ひとつ視力、眼科のAVなのです。

AV(大動脈弁)

心臓の左心室から大動脈に連なる弁であるaortic valve(大動脈弁)のことを、AVと略されることがあります。大動脈弁狭窄症(AV狭窄症)、大動脈弁閉鎖不全症などの病気と関連します。ちなみに後述しますが、僧帽弁と三尖弁を併せて「房室弁」と呼ぶこともありますが、こちらはatrioventricular valveでAV valveと略することがあります。AVのVがvalveを意味する場合は大動脈弁を指し、AV valveと表記される場合は房室弁なので、紛らわしいですね。

AV(奇静脈)

通常、動脈と静脈は対になって併走しますが、対になる動脈が存在しない奇妙な静脈という意味で、奇静脈(azygos vein)という名称の静脈が存在し、AVと略されることがあります。奇静脈は、脊柱の右側を上行し上大静脈に合流します。下大静脈が閉塞を起こした時には、奇静脈がその代わりの側副路として機能します。

AV(アネキシンV染色)

蛍光イメージングやフローサイトメトリーにより、アポトーシスの状況を把握するために用いられる細胞染色法をAnnexin V(アネキシンV染色)といい文献上AVと訳されていることがあります。正常細胞では細胞膜の細胞質表面に局在するホスファチジルセリンが、アポトーシスの過程で細胞膜の内層から外層に移行します。その状況を把握するために用いられます。

apoAV(アポリポタンパク質AV)

脂質代謝やメタボリック症候群の専門家の間で近年注目されているタンパク質が、Apolipoprotein AVです。ヒトでは、11番染色体上のAPOA5遺伝子によりコードされ、肝臓で発現しています。このタンパク質は血漿トリグリセリド濃度を調整する脂質代謝の重要因子で、遺伝子変異によりメタボリック症候群のリスクが増大することが知られています。

18F-AV-133

謎めいた記号みたいですが、18F-AV-133とはパーキンソン病の診断に有用とされる脳PET検査のマーカー、18F-FP-(+)-DTBZの開発番号で、核医学の文献で見かけます。18Fで標識されたジヒドロテトラベナジン類似体であり、黒質線条体のシナプス前ニューロン内輸送体であるVMAT2に選択的に結合します。

AVN

整形外科医はAVNという略語をよく使います。アダルト・ビデオとは無関係で、Avascular necrosis(阻血性骨壊死)という病気の略語です。骨折や関節脱臼などに伴って、あるいは原因不明こともありますが、骨への血液供給が阻害されることにより、骨組織が壊死する病態です。大腿骨で起こりやすい病変です。

AVP

下垂体後葉から分泌される抗利尿ホルモンであるバソプレシンのことを、専門家はもったいぶってAVPと表記します。バソプレシンは9個のアミノ酸で構成されており、8番目のアミノ酸がブタなどではリジンあるのに対し、ヒトではアルギニンであることから、アルギニン・バソプレシンと呼ばれ、AVPと略されます。

AVH

ウィルスが原因の肝炎は、急性ウィルス性肝炎(acute viral hepatitis)と慢性ウィルス性肝炎とに大別されます。前者はAVHと略されることがあり、主としてHAV(A型肝炎ウィルス)やHEV(E型肝炎ウィルス)により発症します。ちなみに後者の典型例は、HBV(B型肝炎ウィルス)やHCV(C型肝炎ウィルス)です。

「動静脈の」を意味するAV

動脈のことを英語でartery、静脈のことをveinといい、それぞれ頭文字をとって、動脈はA、静脈はVと略することがあります。通常、体の中で、動脈と静脈は直結するのではなく、途中に毛細血管という細い血管網を介してつながっています。その動脈と静脈のつながり方に関連する現象や病気を表現する形容詞、arteriovenous(動静脈の)はAVと略されます。具体的には、次のような使われ方をします。

AVM、AVマルフォーメーション

フォーメーションというと、なんとなく格好いい響きの英単語で、バスケットボールやラグビーでは選手の配置を意味して用いられ、競馬では馬券を購入する際の組み合わせを意味し、最近では、デジタル・トランスフォーメーション(DX)という表現もよく目にします。

そもそもフォーメーションは、「構成」とか「編成」を意味する単語ですが、医学領域では、「悪い」を意味する形容詞malを頭につけて、malformation(マルフォーメーション)という用語があり、「奇形」を意味します。AVマルフォーメーション、あるいは略してAVMは、動静脈奇形という病気のことです。

異常な動脈と静脈が毛細血管を介さず直接つながり、この部分がとぐろを巻いたような塊となっています。正常な血管に比べて壁が薄く、破れやすく、出血の原因となります。大脳の血管で好発し、20~40歳代の若者の脳出血の原因の1つです。

AVF

毛細血管を介さずに、動脈から静脈へ直接血流が流れ込む病態のことを、動静脈瘻(arteriovenous fistula)といい、AV fistula、あるいはAVFと略されることがあります。

もともと動脈と静脈とでは圧力差があり、動静脈瘻により動脈血が直接静脈に流入すると、静脈は同脈圧に耐えきれずに拡張したり、静脈瘤(こぶ)が形成されます。

AVA

上述のとおり通常、動脈と静脈は毛細血管を介してつながりますが、体の末端部分では、毛細血管を介さず、動静脈吻合血管Arteriovenous anastomoses、AVAと略されます)と呼ばれる血管により連結されます。AVAは、手掌、足底および指の皮膚、爪床、鼻、耳などでみられ、体温調整に関わっています。

AVシャント

血液透析を行っている患者さんであれば、AVシャント、あるいは単にシャントという言葉をご存じかと思います。上述のとおり通常、動脈と静脈は毛細血管を介してつながりますが、血液透析患者には、十分な血液量が確保できるよう、手術により動脈と静脈を直接つなぎ合わせます。このように人為的に動脈と静脈を直接つなげた血管のことを動静脈シャント(AVシャント)と呼ばれます。

AVG、AVグラフト

広義のAVシャントの1つですが、動脈と静脈を直接つなぎ合わせるのではなく、動脈管と静脈管の間に人工血管(グラフト)を介在させ両者を結合させることを人工血管使用内シャント(AV グラフト、AVG)と言います。

「房室の」を意味するAV

心臓には、右心房とか左心室と呼ばれる部位がありますが、心房のことを英語でatrium、心室のことをveinといい、それぞれ頭文字をとって、心房はA、心室はVと略することがあります。心房と心室の両者に関する構造や機能、あるいは病態を表現する形容詞、atrioventricular(房室の)はAVと略されます。具体的には、次のような使われ方をします。

AV溝(AVグルーブ)

心房と心室の境界部分に、atrioventricular groove(AV グルーブ、房室溝)と呼ばれる溝状の部位があります。AVグルーブというと、アダルト・ビデオ好きのパリピみたいな名称ですね。

AV弁(AVバルブ)

心房と心室の間にある弁のことをatrioventricular valve(AV valve、房室弁)と総称することがあります。左心房と左心室の間にある僧帽弁と、右心房・右心室間の三尖弁とがあります。前述のとおり、左心室から大動脈に出ていく部位にある大動脈弁のことをAVと略することがあるので、紛らわしいですね。

AV管

胎児期の心房と心室の間の管状の部位であるatrioventricular canal(房室管)は、発生が進むと後に房室弁や房室中隔に分化します。

AV輪(AVリング)

心臓のもととなる胎児期初期の心筒における輪状の部分で、後に房室弁や房室中隔に分化する部位のことをatrioventricular ring(AVリング、房室輪)といいます。

AV中隔

心房と心室を隔てる心腔内の仕切り(心内膜床)のことをatrioventricular septum(AV中隔、心房中隔)といいます。この部位に生まれつき欠損がある心臓病が、房室中隔欠損症です。

AV口

房室中隔欠損症などの病気で生じている心房と心室の間の開口部のことを、atrioventricular orifice(房室口)といいます。

AV結節(AVノード)

AV node、正式にはatrioventricular node(房室結節)はアショフとか田原結節という別称もあります。心房と心室の間にある、未分化な心筋の塊で、心房の洞結節で生じた心拍刺激を調整する役割を果たします。

AV束

AV bundleを直訳すると「AV束」ですが、アダルト・ビデオの束ではありません。atrioventricular bundle(房室束)のことで、通常は「ヒス束」と呼ばれます。洞結節で生じた心拍刺激を、房室結節からプルキンエ線維に伝導する役割を果たす心筋線維の束です。

AV接合部(AVジャンクション)

AV結節(房室結節)とAV束(ヒス束)を合わせた部分をatrioventricular junction(AVジャンクション、房室接合部)と呼ぶことがあります。

AV伝導

房室結節やヒス束などを通って、心拍刺激が伝わっていく房室伝導のことを、英語ではatrioventricular conduction(AVコンダクション)とかatrioventricular transmission(AVトランスミッション)といいます。AVソムリエのようなアダルト・ビデオの伝道師のことではありません。

AV伝導路(AVパスウェイ)

房室結節やヒス束など、心拍刺激が伝導する経路のことを、atrioventricular pathway(AVパスウェイ、房室伝導路)と呼ぶことがあります。

AVインターバル

心房から、房室結節やヒス束などを伝導して心室に心拍刺激が伝わり、心室筋が収縮するまでの時間を、atrioventricular interval(AVインターバル、房室伝導時間)といいます。

AV同期(AVシンクロ)

心臓が正常に機能するためには、AV伝導が正常に作動する必要があります。心房部分と心室部分がうまくシンクロして正常に拍動していることをatrioventricular synchrony (AVシンクロ)といいます。

AVブロック

AVブロックというのはメジャーな用語ですが、アダルト・ビデオを視聴できないようフィルタリング(ロック)することではありません。脈拍異常(不整脈)の原因の1つで、AV伝導に障害が生じ、心拍が正常に心室に伝わらない病態のことをatrioventricular block(AVブロック)といいます。

AV 解離

AV伝導の障害などが原因で、心房と心室がバラバラに拍動(収縮)している病態を、atrioventricular dissociation(AV解離、房室解離)といいます。

おわりに

いかがでしたでしょうか。アダルト・ビデオに脳内汚染され、すっかりAV脳になってしまった管理人は、普段こんなことばかり考えています。という訳では決してありません。最後まで目を通していただいた方は少ないと思いますが、今回取り上げたAVがらみの医学用語を知っていると、相当のAV通であること間違いなしです。エロバナの際にでも、どうぞご活用ください。

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